もっと弱くなれ
クレヨン牧師のミニエッセイ
「もっと弱くなれ」
一度は読んでみたいと思っていた作家の一人に、吉川英治がいます。父の書斎に彼の本を見つけたのは小学生の頃でした。しかし、なかなか読む機会にぶつかりませんでした。
ところが最近になって、書店で彼の文庫を見たときに思わず買ってしまったのです。いろいろと伏線はあったのですが、いま夢中になって読んでいます。吉川英治著「宮本武蔵」全8巻。なぜ「宮本武蔵」なのかわかりませんが、この小説は面白いだけでなく、精神面での深い洞察が心を打つのです。
「お前は強すぎる。もっと弱くなれ」と、宝蔵院の日観和尚に言われて悩む武蔵。「もっと弱くなれ」のなかに、主イエスの十字架が偲ばれてなりません。
私もまだまだ駆け出し牧師。キリスト教の強さばかりを考えてきました。しかし、信仰とは強いことなのでしょうか。勝って勝って勝ちまくることなのでしょうか。「もっと弱くなりなさい」との主イエスの言葉が聞こえてくるのはなぜでしょうか。たぶん、「弱くなってあなたのすべてを私にまかせなさい」と十字架の主は言われているのでしょう。