捨てきれない
クレヨン牧師のミニエッセイ
「捨てきれない」
教会の姉妹が大学進学のために、東京へ旅だって行かれました。この季節が来るたびに自分の原点を思い出します。親から離れて一人立ちしたのが、大学進学の時だったのです。
神学大学の寮につき、自分の荷物をまえにしたときの、なんとも表現できない悲しいような気持ちを思い出すのです。部屋についた荷物は、布団一組と段ボール箱一つでした。箱の中には本が三冊とカセットテープ、鉛筆削り、そしてインスタントコーヒーだったのです。あれから十五年、なんと荷物が増えたことでしょうか。三冊だった本はいまや段ボール百箱。あ~あ。家族が増え、家具が増え、ステレオに車が増え、心に平安が増え、心配事が増え。
私たちはたくさんのモノを持っています。物質的にも、精神的にも。持ってしまった以上に捨てきれないのも私たちです。しかし、原点を思い出すたびに何が大切かを思い知るのです。なぜなら、三冊の本とは「聖書」だったのですから。
捨てきれない荷物のおもさまえうしろ 山頭火